RESEARCH

タンパク質による細胞機能の制御機構の解明

DNAからmRNA、mRNAからタンパク質が作られるという流れは1958年に提唱され、多少の修正を経て現在でも分子生物学の基本原則としてセントラルドグマと呼ばれています。しかし、各段階でどのような制御機構が存在しているのかという全貌はいまだ解明されていません。我々は、各種大規模データを解析し、タンパク質の量が特異的に変化している遺伝子群を細胞種類に応じて同定し、その機能を解明します。各細胞の独自性を決定するタンパク質の制御機構が明らかになれば、制御を担うタンパク質を強制的に発現させることで悪性の腫瘍を死滅または良性に変化させるなどの、細胞運命の人為的な制御ができる可能性があります。また、細胞種によって異なるタンパク質をターゲットとした治療薬を開発したり、iPS細胞を作りやすくするタンパク質を解明したりすることで、製薬や医療応用等の幅広い分野に波及すると考えられます。

様々な翻訳後修飾の幹細胞における役割解明

細胞内のタンパク質を一度にすべて測定することをプロテオーム解析と言います。一般的にプロテオーム解析では「高速液体クロマトグラフィー」に「質量分析器」を接続した方法が用いられます。これは細胞内のタンパク質を断片化した後に、細長いカラムに通して分離し、カラムを流れてくるペプチドを順番に質量分析器と呼ばれる装置にかけることで、そのタンパク質の同定および定量を行います。
リン酸化、メチル化、ユビキチン化などの翻訳後修飾は幹細胞に限らず様々な細胞で重要な役割を担っていますが、単純にプロテオーム解析で測定しただけでは各種の翻訳後修飾を受けたタンパク質を同定することはできません。我々は様々な修飾を考慮した分析システムを立ち上げます。さらに、これらの翻訳後修飾が幹細胞や各種分化細胞に及ぼす影響を明らかにします。

プロテオーム解析の基盤となる技術の開発

質量分析計の進歩に伴い、タンパク質の同定効率は格段に向上しましたが、多能性幹細胞で重要な働きを担っているものの発現量が少ないc-MYC遺伝子やKLF4遺伝子などの遺伝子群の同定は未だに困難です。また、タンパク質の定量方法は様々な手法がありますが、その定量精度を高める必要があります。
我々は分析系をよりよくすることでイオン化感度を向上させ、より低濃度のタンパク質を精度良く同定できる分析手法の開発を進めていきます。また、定量精度を向上させるプログラム、ピークピッキング手法、プレカーサーイオンの選定など、よりよいプロテオーム解析につながる手法の開発を行います。
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